人手不足、設備の老朽化、採用難、顧客要望の高度化。
中小製造業を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。
「改善したいことは多いが、投資の余裕がない…」
そんな声から、設備更新・省力化・DX に補助金を活用する企業が増えています。
本記事では 2025年に中小製造業が実際に使いやすい主要4つの補助金 を、
概要→詳細→選び方まで一気に整理します。
※本内容は2025年11月時点で公表されている情報をもとに構成しています。補助要件・上限額・公募スケジュールは制度変更の可能性があるため、申請前に必ず最新の公募要領をご確認ください。
◆製造業が補助金を活用すべき理由
製造業が補助金を活用するメリットは、単なる費用削減にはとどまりません。
改善や自動化に踏み切る“きっかけ”になる
投資判断を後押しし、改善を前倒しできる。人手不足の構造課題に対し、仕組みで解決できる
人を増やすのではなく「工程そのものを変える」発想が進む。取引先からの要求(品質、トレーサビリティ、短納期)に対応しやすくなる
DX・自動化は取引維持にも直結。省エネ設備や最新機械に入れ替える絶好のタイミング
2025年度は設備系補助金が充実しており、更新の好機。
“使える補助金があるうちに改善を進める”
これが2025年度の製造業にとって重要なポイントです。
◆主要な製造業向け補助金一覧(比較表)
以下は、2025年現在で代表的な補助金を、 対象・補助率/補助上限・補助率・公募状況・特徴から整理した表になります。
改善を考える際は、まずはこの中から使えそうなものがないか一度ご検討ください。
| 補助金名 | 主な対象 | 補助率 / 補助上限 | 2025年公募状況 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| ① 中小企業省力化投資補助金(一般型・カタログ型) | 省力化設備・自動化 | 1/2〜2/3 / 数百万円〜1,000万円程度 | 2025年も複数回公募 | 最も使いやすい省力化投資支援 |
| ② ものづくり補助金 | 生産性向上・DX・新技術 | 1/2〜2/3 / 最大1,250万円 | 年数回公募 | 新技術や高度DXを進める企業向け |
| ③ 省エネ設備導入補助金(2025年継続) | 省エネ設備・高効率機器 | 1/3〜1/2 / 上限数百万円 | 2025年度継続 | 経産省系の省エネ設備支援 |
| ④ 事業再構築補助金(産業構造転換枠) | 新分野展開・業態転換 | 1/2〜2/3 / 数千万円 | 2025年は不定期公募 | 大規模投資にも対応する大型枠 |
◆補助金詳細
① 中小企業省力化投資補助金(一般型・カタログ型)
省力化・自動化設備の導入を支援する、2025年も最も利用が見込まれる補助金
加工、組立、検査、搬送など多くの工程に適用でき、中小製造業との相性が良い制度です。
向いているケースと活用例
人手不足で手が足りない工程がある
活用例: 検査の自動化カメラ導入、組立の半自動化装置など繁忙期だけ残業が増える工程がある
活用例; 部品供給の自動搬送台車や自動供給装置の導入単純作業の品質ばらつきが課題
活用例:トルク管理の自動測定機、外観検査の自動化ツールなど
主な利用条件
中小企業であること
(製造業の場合:資本金3億円以下または常時使用従業員300人以下)賃上げ計画の策定
(給与総額年平均6%以上増加、地域別最低賃金+50円以上など)補助事業終了後の報告義務
※ 枠により条件が変わるため要確認。
② ものづくり補助金
IoT・ロボット・AI・新工法など「高度な生産性向上」を支援。
新製品開発や工程革新など、挑戦的な投資と相性が良い制度です。
向いているケース(活用例つき)
新技術導入で競争力を高めたい
活用例:IoTセンサーによる稼働監視、AIでの検査自動化、工程データ連携システム導入自社独自の工程を改善したい
活用例: カスタム治具・専用機の開発、特殊加工の自動化ライン構築新製品の試作や工程革新に挑戦したい
活用例:新工法の実証設備、3Dプリンタを用いた試作環境整備
主な利用条件
中小企業であること
(製造業の場合:資本金3億円以下または常時使用従業員300人以下)事業計画の作成
(3〜5年後の生産性・付加価値向上計画)賃上げ要件
(枠により異なる、例:売上増加に伴う給与増加計画)
③ 省エネ設備導入補助金(2025年度継続
高効率モーター、空調、照明など、省エネ設備への入れ替えを支援。
2025年は経産省系の省エネ支援が継続し、設備更新の追い風となっています。
向いているケース(活用例つき)
老朽設備の更新を検討している
活用例:コンプレッサー、冷凍機、高効率ボイラーの入れ替え電力コストを削減したい
活用例:高効率空調・LED照明の導入、インバーター化環境要求への対応を進めたい
活用例:高効率モーターへの統一、エネルギー使用量の可視化システム導入
主な利用条件
中小企業であること
(製造業の場合:資本金3億円以下または常時使用従業員300人以下)省エネ効果を定量的に示せること
設備が対象リストに含まれていること
④ 事業再構築補助金(産業構造転換枠)
業態転換・新分野展開など、ビジネスモデルの見直しを支援する大型補助金。
2025年も「産業構造転換」を重視し、不定期に公募が実施されています。
向いているケース(活用例つき)
新事業を立ち上げたい
活用例:新製品の製造ライン新設、新工場の立ち上げ既存市場の縮小に対応したい
活用例:新業種への転換、新たな顧客セグメント向け製品開発大型設備を導入して事業構造を変えたい
活用例:高性能加工機や大型自動化ラインの導入
主な利用条件
中小企業であること
(製造業の場合:資本金3億円以下または常時使用従業員300人以下、中小企業等事業再構築促進法対象)明確な事業再構築計画
(売上構成変化レベルの転換計画、金融機関確認書)賃上げ要件
(枠ごとに異なる、例:事業計画期間中の給与増加)公募は不定期のため最新要領を確認
※各補助金の利用条件に記載の”中小企業”の定義は業種・地域により細かく異なる場合があります。詳細は公募要領または中小企業庁サイトでご確認ください。
◆自社に最適な補助金は?改善テーマ別の選び方
改善テーマごとに適した補助金は異なります。
補助金に悩んだ際は、以下を参考にご状況にあったものをご確認ください。
省力化・自動化を進めたい
⇒ ①中小企業省力化投資補助金高度なDX・工程革新を進めたい
⇒②ものづくり補助金エネルギーコストを下げたい・老朽設備を更新したい
⇒③省エネ設備導入補助金新分野展開・大型投資を検討したい
⇒④事業再構築補助金
※以上の4つで主要な案件に対応可能ですが、他にも多数制度がございます。
◆補助金活用のよくあるつまずき
補助金申請では、
「要件に合っているか」、「実現可能性が高いか」
を客観的に示すことが求められます。
しかし、実際には多くの企業が共通したポイントでつまずき、申請が通らないケースが少なくありません。
この章では、現場で特に多い失敗例を整理し、どのように回避すべきかをわかりやすくまとめます。
1.公募要領との整合性不足
申請内容が補助金の目的・対象経費・審査項目に正しく合致していないケースです。
「設備更新=補助対象」と思い込んでしまい、細かな要件を読み落とすことで不採択につながります。
対策
公募要領を必ず最新版で確認し、投資内容がどの項目に該当するかを文書で明確に示すことが重要です。
2.公的補助の必要性の欠如
事業計画書の中で、「なぜ国の補助が必要なのか」を説明しきれず、
“自社単独でも簡単に実施できるのでは?”と審査側に判断されてしまうケースです。
対策
自社の資金力・成長計画・市場環境を踏まえ、
補助があることで実現できる効果やスピードを論理的に説明することが求められます。
3. 計画の具体性・実現性の不足
熱意やビジョンが中心で、実現するための手段(人員配置、技術的根拠、市場調査)が不足しているパターンです。
「実現可能性の根拠」が弱いと、どれだけ優れた構想でも採択されません。
対策
自社の過去の実績、技術力、パートナー企業、スケジュールなどを
定量的・客観的に示すことで、実現可能性を補強する必要があります。
4.課題と目標設定の曖昧さ
現状分析が不十分なため、
・自社が何に困っているのか
・補助金で何を解決するのか
・どの数値を改善するのか(KPI)
が曖昧になるケースです。
対策
現状の課題 → 投資による改善 → 数値目標(生産性、原価率、リードタイムなど)
という流れで整理し、論理的につながる計画を作ることが重要です。
5.計画的な準備の遅れ
公募期間は短く、補助金は「事前に準備していた会社」が圧倒的に有利です。
提出直前で書類作成を始めてしまい、計画の精度が低いまま申請するケースが多く見られます。
対策
公募開始前に設備や事業内容の方向性を固め、
見積取得、事業計画の骨格づくり、専門家への相談を早めに進めることが必須です。
◆補助金を活用した改善を進めたい方へ(ご相談ください)
補助金は、中小製造業の設備投資・省力化・DXを後押しする非常に心強い制度です。
しかし、毎年制度内容や対象範囲が変わるため、「自社の場合はどう使えるのか?」が分かりづらいことも多いと感じています。
今回ご紹介した4つの主要補助金は、製造業が活用しやすい代表的なものですが、これ以外にも用途や規模に応じた制度が多数あります。
もし、
- どの補助金が自社に合うのか知りたい
- やりたい投資が補助対象になるか確認したい
- 申請の進め方や準備のポイントを相談したい
といったことがあれば、お気軽にご相談ください。
Central Island Consulting では、製造業に特化した実務的な視点で、御社の状況に合った活用方法をご提案します。
改善の一歩を、無理なく、着実に進められるようサポートいたします。
